歯科医

西日さす歯科医の椅子の被虐かな


  歯を治療した。神経ごと歯の芯を抜いたのである。上顎の歯なので頭をかなり下げた状態で、先生が「さぁて、やるか」と不吉なつぶやきを放つ。削るのは彫金に使うのと同じリューター、芯を抜くのは極微なサイズの尖ったドリル、古代エジプトでミイラを作るとき死体の脳みそを抜くのに使うアレの顕微鏡サイズ版である。顕微鏡サイズでも頭蓋骨には震度6強の響きに感じる。衛生士さんの「もう少しですよ〜、頑張って」という声が天使のように聞こえる。麻酔でハイになっているのでもうどうにでもしてという感じ。終わった後は先生も天使のように見えた。