2005-08-01から1ヶ月間の記事一覧

百合

百合の野に立つ人影の絹の裾 お盆休みに家族でドライブに行き、常磐道に乗った。高速の法面やその付近の草藪に、延々とテッポウユリが大群落になって咲いていた。あれだけの本数を人が植えたとは考えにくいので、何かの原因で大発生したのであろう。浮き世離…

ふるさとの名前変われど梅かりり 私の故郷の町は、数年前に近隣の町と合併し、名前が変わった。今回の大合併より少し前のことだ。毎年一、二回帰省するが、帰る度にどこかしこがすっかり変わってしまっているのに愕然とする。町自体がとめどもなく変わってい…

虹七幅天の牧場を駆けりたし 秋は天気が不安定である。海にほど近い伊達市の畑で一日仕事をした日、海から雲が湧いて流れてきては雨が降りだし、やがて止んで日が射す、というのが七回繰り返された。日が射す度に虹が出現し、一日になんと七度虹を見た。 虹…

蜻蛉

タンデムのとんぼ千組襲来す お盆休みを終えて帰ってくると、空は蜻蛉だらけになっていた。すべて2頭繋がったつがいの蜻蛉。北海道の空はもう秋である。

蜘蛛

鬼蜘蛛の軒先借りて雨宿り 蜘蛛が結構好きである。巣を張る作業中など実に職人的で、見ていて飽きることがない。春、畑に種を播く時、区画の目印用に細いポールを使うのだが、何本も土に立てるそのポールの先端に、1mmほどの子蜘蛛が1頭ずつ止まっている。…

車のメーター句

いやに酔うなぁ昼の月見の金魚酒 幾百の徳利倒して恋終わる ふふふいちごのドロップ含んだままキス 夫婦莢に収まっていて虫喰わる よくお読み薄の原の落とし文 欲含み雫乗せたる花薔薇 庭燦々散歩の小径の麗らかさ 勇み世直し遠くにありて秋の空 文四百書い…

牝鹿

黄からしの野で逢ひ見たり牝鹿かな 大豆畑で仕事をしていたら、隣の緑肥の黄からし畑に牝鹿が一頭現れた。彼女はじっとこちらを見ていたが、こちらが3人とも女ばかりであるせいか、ことさら警戒する様子もなく、悠然と林の中に消えていった。北海道では時々…

向日葵

刈り倒す向日葵の香のあを うまし 大豆畑で仕事をしていると、隣の畑で緑肥のひまわりを刈り倒し、鋤込んでいた。青臭い匂いがウドに似ていて、ウドのてんぷらとか酢味噌あえとか食べたくなって、しまいには日本酒が飲みたくてたまらなくなった。帰りに生酒…

蝉の声輩の樹々在りし夏 お盆休みに上野公園に行った。蝉時雨のなか、それぞれに性格のある樹々が植わっていた。昔、たくさんの樹が友達だった頃を思い出した。梯子のように高く登ることのできる木、樹冠が傘のように開いていて枝の上に寝転がることができる…