2006-06-01から1ヶ月間の記事一覧

アカシア

あかしあの谷に懸かりし魔法陣 仕事で十勝に行った。移動の車窓から見える夕張の山の中に、何本ものアカシアが満開に咲いている谷があった。アカシアはとても強い香りを放つ樹である。あれだけの本数が空気の淀む谷間に咲き乱れていると、さぞかしむせかえる…

罌粟

罌粟の朱地面を裂いて出現す 半ば雑草化した観賞用の草花が、アスファルトの隙間から生えてくる。罌粟もその一つ。

しじみ蝶

薬指の爪ほどの影しじみ蝶 一センチ四方ほどの小さいしじみ蝶。北海道ではあまり見かけないような気がするが。

かえる

かゆいとこかかるるごとき蟇のこゑ 今日は水田に囲まれた畑で仕事をした。土日から天気が良くなり、暖かくなったせいか、カエルが湧くように鳴いていた。水田はカエルの養殖池のようなもの。雨の日などは米でも播いたように、小カエルが道路に湧き出していて…

ラムネ

夏空やラムネの瓶の底の雲 初夏の観光シーズンになると、大通公園には焼きトウモロコシとジュースの屋台が並ぶ。そこでラムネを飲むのを、夏の習慣のひとつとしている。ところが、今日行ってみたら、以前はガラスの昔ながらの瓶だったのが、ぺこぺこのプラス…

遠雷

遠雷や恋文綴る手が止まり 昨夜は雷。嵐は天気が変わる前触れ、と、寒い夏が暑く変わってくれることを期待したが、今日も寒い。それにしても「恋文」は少々気障であったか。

子鹿菊

薫り立つ林檎の青の子鹿菊 この近辺のどこにでも生えている雑草で、コシカギクというのがある。花びらがなくて、真ん中だけの不思議な花である。見栄えは地味だが、カモミールの親戚なのであろうか、とても甘い林檎の香りがする。

コーラ

静けさやコーラの泡の果てるをと 日頃はあまり飲まないが、ごくたまにコーラが飲みたくなる。深夜、テレビもパソコンも何もつけずにいると、しーんと静かな中にシュワシュワ、フツフツとコーラの泡が立てる音がする。

バッハ

神のみが聴き手のアリア響きをり 久しぶりにジャック・ルーシェのプレイ・バッハを聴いた。いつ聴いてもルーシェのバッハはいい。特に管弦楽組曲など、原曲だと宮廷音楽的でややケバくも感じる曲が、ピアノによるジャズ化した演奏ではクールでストイックで、…

鳥雲

鳥雲や死後の世界なんて無い 週末は分厚い雲がかかり、閉塞感を感じる曇り空。方代の、次の歌にも似た気分を詠んでみた。 あかあかとほほけて並ぶきつね花死んでしまえばそれっきりだよ 山崎方代

万緑

万緑を歩めば恋を忘れけり 緑が眩しい季節になってきた。札幌はそこかしこに街路樹が立ち並び、緑の下を歩くことができる。すがすがしい緑の香りをかいでいると、自分から欲々しい動物気が抜けて、植物的な透明感に満たされる気がする。

耳鳴り

蝉のこゑ濃くなる如き耳鳴りや 軽い耳鳴り持ちであるが、疲れや睡眠不足に遭うとややひどくなることがある。

夏の陽

夏の陽や天高く水昏きより これも道庁赤れんがの池の写真。大好きな画家エッシャーの版画「三つの世界」を気取った絵にしてみた。水の底には木の梢、その遙か深みには眩しい陽光。

ぺんぺん草

ぺんぺん草の余白に我の独り言 職場の建物の際にぺんぺん草が生えていた。地味な雑草だが、このように生えていると線画か水墨画のように絵になっている。

リラ冷え

リラ冷えの街にて想ふ西の果て ここ数日とても肌寒い。ちょうどライラック開花の季節に決まって来る低温を北海道ではリラ冷えと呼ぶ。

液化

おまへごと液化する街の真昼かな この写真は、日曜に札幌に行ったとき、道庁赤れんがの庭園を散歩し、ビルが映った池を撮ったものである。ふとイタズラ心で上下逆さまにしてみたら、面白い絵になった。そして、塚本邦雄の最も有名な一首を思い出した。本家取…

ライラック

リラの香に身を委せをり夏の風 昨日は快晴。大通公園は今ライラックが満開で、良い香りに満ちている。散策するととても気持ちがよい。青空をバックにライラックとテレビ塔のいささかベタな観光絵葉書のような一枚となった。それに合わせて句の方もややベタな…

早苗田

早苗田は空をうつしてしづもれり 河野裕子の歌へのオマージュをもう一句。 たつぷりと真水を抱きてしづもれる昏き器を近江と言へり 河野裕子

柳絮

柳絮舞ふバビロンまでは何マイル 今日は戸外で仕事をした。柳の綿毛がふわふわと舞っていた。雪や花びらや紅葉とも違う、「風の谷のナウシカの腐海の胞子」のような感じ、とでも言えようか。