2005-09-01から1ヶ月間の記事一覧

じゃが芋

お芋ほっくりこんな女になりたいな キタアカリの焼き芋はおいしい。色が黄色く甘いので、薩摩芋に似た感じだが、薩摩芋よりあっさりしている。シンプルに、ダッチオーブンで焼き芋にするのが最も美味である。

豆莢のはじける音や羊雲 大豆の成熟がすすんできた。この時期天気の良い日に畑にいると、あちらでぱちん、こちらでぱちんと澄んだ音がする。莢が乾燥し、はじけているのである。好天で無風の日にしか聞けない音なので、なんとなく牧歌的な気分になってしまう…

半月

星も無きに片喰はれ月の夜の鬱 半月は、月の満ち欠けの中でも不気味な印象を受ける。弦の部分がいかにも闇の淵という感じで、半分ぱっくり闇に喰われてしまっているようである。欠けた部分は大きくても形の美しさの方が印象的な三日月ではこのように感じない…

麦萌えてシャルトリューズの栓を抜く 秋播小麦の芽が一斉に出てきた。この季節の緑には、春の緑とも、夏草とも違う匂いがする。極上の、シャルトリューズ・ヴェールの香りである。

野菊

彼岸晴れ野菊の銀河渡らむか 国道275号線を走っていたら、浦臼と月形の間に、河川敷の草原が全面薄紫に染まっている川があった。車を止めて近寄ってみると、野菊の大群生である。風も菊の香りに満ちている。圧巻であった。

月その五

砂消しで自分消したし二日月 時には、このような気持ちの一日もある。二日月は三日月よりもっと細い月のこと。本当は消え入る月ではなく、これから太っていくのだが。

月その四

月欠けて私だんだん嫌な女 満月から3日目の、今夜の月は居待月という。日没から月の出までの時間が、座って待たないと疲れる程度であることからそう呼称するらしい。ちなみに昨日は立待月、明日は寝待月という。月齢の名前はたくさんあり、特に満月の前後は…

月その参

百億の相関ありて静寂なり 昔、童謡の「月の砂漠」は、月夜の砂漠ではなく、月面の砂漠のことだと本気で思っていた。なので今でも、私のなかのイメージでは、王子様とお姫様が駱駝に乗って行く夜空には、青い地球がきらきらと浮かんでいるのである。

月その弐

満月を杯に浮かべてひと呑みに 今日は紗に包まれたようなおぼろ月。 日本では月にいるのは兎だが、外国では蟹がいるとするところもあるそうな。私も蟹の方がそれらしく見えると思う。酒の肴にするのも蟹の方がよい。月の蟹を肴に賞でる美味き酒。

月はるか黒い小石を投げてみる 今宵は中秋の名月だが、北海道は厚い雲がかかっている。残念。見ているつもりになって月夜の句を。 それにしても月って肉眼にはあんなに大きく、くっきりと見えるのに、写真に撮ろうとするとただの光の点になってしまうのはな…

鈴虫

頭蓋骨のなかの鈴虫りりりりり 昨年、耳を病んで、それ以来耳鳴り持ちになった。幸いあまりひどくはないが、虫の音のようなかそけき音が常に聞こえている。不思議なもので、雑音と思って逃れようとすると不快だが、美しい虫の音だと思って聴き入るようにする…

手袋

手袋ひとつ轢かれし果ての執着や 道に手袋が落ちているとぎょっとする。作業用のゴム手袋で、手がぽとりと落ちているようである。何かの意志を持って、路面を掴んでいるかのようで、怖い。

秋風

秋風が蝶の死骸を拾ふなり 急に寒くなった。昨日までは家に帰ると「もわん」だったのが「ひんやり」に。バティックシャツとサンダルにさようならである。ここから先は冬まで転がるように。

さくらんぼ

桜ん坊たわわ友人知人の子のような さくらんぼのあの可愛いさは、ずるいと思う。まるで少女の持ち物の柄にするために生まれたような姿をしている。同じカワイイ系の苺でも、さくらんぼには一歩譲らざるを得ない。私たちがさくらんぼを食べるとき、味なんかも…

すもも

李さくり眺めてしまう歯の形 李のいいところは掌に持って囓るのに実に理想的な大きさをしているところである。日本の桃や林檎の品種は、そのままではいささか大きすぎ、結局切り分けて食べることをむねとする。林望氏が絶賛するところの、イギリスの林檎品種…

プルーン

なつかない姪っ子のような プルーン プルーンは主に干し果物で食するが、稀には生で売られるていることもある。 整った楕円形といい、地味な紫色といい、「健康にいい成分、機能性が売りです」という頭脳に訴える態度といい、いかにもコナマイキな優等生チッ…

洋梨

醜くて甘い洋梨がいとおしい 洋梨はもぎ取ったばかりはおいしくない。しばらく保管して追熟させると、得も言われぬ芳香を放ち、酒のように甘くなる。37歳にもなると、じゃが芋のような外見なのにこの上なく甘い洋梨に親しみを感じたりする。

林檎

群に居づらし黄色い林檎が好きなこと 今日からいくつか果物シリーズ。 私は赤いふじやつがるより黄色い王林が好き。香りが強く、大きさも手頃で、なんといっても甘い。黄色にほんのり赤いマオイという品種もある。これは「林檎のようなほっぺ」ならぬ「ほっ…

油揚げ

まあ一献君が買ひきた油揚げ 夢枕獏の小説「陰陽師」シリーズでは、主人公の安倍清明の友人源博雅が酒の肴を手に訪れて、縁側で月だの星だの秋草だのを愛でつつ酒を酌み交わすシーンが必ず出てくる。現代の家の造りではなかなか出来ないことなので、とても羨…

麦酒

麦酒満載コンテナ車の後従いていく 千歳に大きなビール工場があるので、車を運転していると、時々ビールを運ぶトラックに出会う。トラックの後を走るのは、普通は前が見えないし、スピードも遅いのでいらいらするものだが、ビールコンテナトラックだけは別で…

揚羽蝶

稔田を真っ直ぐ渡る揚羽蝶 米所蘭越町の水田は早くも穂が頭を垂れ、あかるい黄色に色づいていた。その上を、黒い揚羽蝶が何羽も飛んでいた。大きな揚羽蝶はあまりひらひらせず、直線的に飛ぶ。

山百合

山百合の咲き狂ひたる焼け野原 昨日の句を書いていて、思い出した話がある。森の下草の中にひっそりと咲く小さい百合の花。それが、山火事などで森が焼けたとき、どういう力が働くのか、焼け跡に大群落となって咲き乱れるのだという。その光景を想像すると、…