2005-11-01から1ヶ月間の記事一覧

石切の崖に仏面現れし 昔石切場だったという崖があった。法面の凹凸が心なしか人の顔のように見えた。

電車

かたたんたんかたたんたんとゆく電車 姫新線は一両編成で、電車の音も軽い。同じローカル線でも、ディーゼル汽車の北海道とは違う音。ジブリの「千と千尋」に出てくる電車の、あの音である。

姫といふ漢字をキとも読む理由 姫路に行った。姫路から出るローカル線は姫新線と書いて「きしんせん」と読む。姫と書いてキ。き、キ、鬼。「ひめ」の内面に「鬼」が潜んでいるようなうすら寒さである。

霧けぶる山里なりし霧に消ゆ 丹波地方に朝出る霧が、質の良い作物を生むのだと、土地の人は口を揃えて言う。朝霧に霞む笹山に別れを告げた。

穴太衆

古の穴太の衆の鑿の跡 笹山城跡の石垣の石には、職人の仕事の跡がくっきりと残っている。

笹山城跡

野面積み天が落ちれど崩れざる 笹山城跡へ行った。穴太(あのう)衆という石積み職人の積んだ石垣。味のある乱れ積みながら堅固であることは白州正子著「日本のたくみ」に記されている通り。

干し柿

干し柿の里にて遠き家族かな 法事のため丹波に来ている。どの家の軒先にも干し柿が干してある。遠い親戚達と飲んだり食べたり。30年ぶりに訪れた父は少々舞い上がり気味。楽しい。

ナナカマド

裂かれても変わらぬ思慕や七竈 職場の前庭に生えている一本のナナカマド。虫に食われてもいたのだろうか、風の強い日に幹が裂けて折れてしまった。今は一本だけ残った一番下の枝が可憐な赤い実をつけている。

綾取り

狐野で無限のあやとり遊びかな TVのCMで子供があやとりをするシーンが出てきて、ふと、懐かしくなった。そういえば二人で取り合って、延々「川」のままでいるのや、最初の型に戻ってきてループの繰り返しになるパターンもあったっけ。もしかして、昔、原っぱ…

電脳喫茶

星雲や電脳喫茶にある異界 ネットカフェというものがあるらしい。別に家庭にあるPCと何ら変わらないのであろうが、「ネット専門の場所」という事実が特異な感覚をもたらす。

宿酔

昨夜の酒残れる身にて刃物持つ ボージョレー恐るべし。飲んでいるときはジュースみたい、なのだが。毎年やらないと気がすまない自分に喝(?)。

新酒

あわ立ちて実り寿ぐ新酒かな ボージョレー・ヌーヴォー解禁日。なんだかんだいいながらつい買って飲んでしまうのは酒飲みの悲しい(?)性。先ほど世界遺産のサンテミリオンをNHKで紹介していた。苗を植えてから葡萄が実るようになるのに数十年。ワイン作り…

月夜

音のない氷月夜に冷やす酒 今日は満月。雲もなく、煌々としてとても冷えている。北海道の住宅は窓が二重ガラスで、うまい具合にボトル一本分くらいのその隙間に酒をおいておくときんきんに冷える。もう少しして雪が積もったら、そのままずぼっと瓶を雪に突き…

夜長

夜更けてこんな孤独も肴とす 北海道は緯度が高いため、日長の変化が激しい。夏は午後七時過ぎまで明るいのに、今は午後四時過ぎるともう暗い。ワインを舐め舐めつい本だの映画だので夜更かししてしまう。

どうしても抜くでもなしの小棘かな 仕事柄よく手に棘が刺さる。特にいやなのは古いグラスウールのポールをうっかり素手でさわったとき、目に見えぬほどの細かいガラス繊維が刺さるのである。ひどく痛いわけではないが、見えないから抜くこともできないし、と…

きりぎりす

冬来たる骸となりしきりぎりす 駐車場の砂利の上に、きりぎりすの死骸がころがっていた。雪も少しちらついてきている。例年より遅いとはいえ、確実に冬である。

灯油

つたぷたぷつつたぷたぷと油揺る 今年は灯油が高い。昨年の1.5倍くらいする感じである。北海道は各戸に何十リットルも入るホームタンクが完備されているが、一度に買うと高いので、ポリタンクで少しずつ買う。

雨雲

あまぐもの往来忙しくなりて冬 天気が非常に変わりやすくなった。朝はピーカン、昼頃には真っ黒に曇って雷混じりの土砂降り、3時以降にまた日が射す、という感じ。季節の変わり目は毎年こうであるが、今年は平年より半月ほど遅い気がする。

シュレッダー

シュレッダーに餌をやる如く紙喰はす いろいろと書類を処分する必要が生じて、シュレッダーを買った。それを使うのが妙に快感で、癖になりそうである。職場にある高性能のシュレッダーはさらりさらりとスマートに紙を処理していくのだが、私の買ったのはもっ…

資源ごみの日におもひでの箱壊す 必要がなくなった思い出の箱。こんなものもつい資源ごみに分別しようとしてしまうのがふとおかしかったりする。

三日月

アラビヤの窓より望む三日月夜 今日は、美しい三日月であった。地平近くに、大きく、赤みがかった三日月。満月が日本や中国といった東方のイメージがあるのに比べ、三日月が西方のイメージがあるのはなぜだろう。

風の寺

荒野にて何の祈りや風の寺 林望氏のエッセイ「イギリスはおいしい2」を読んだ。これによると、荒野に用途不明の建造物が突如建っており、それは「風の寺」と呼ばれており、イギリスのある貴族が過去に建てた「つくりものの古代遺跡」であるという。誰が何を…

君の名を思ひ出せずに夢醒める 夢の中で、昔の記憶の断片が意識の表面に浮上することがある。大抵はつかまえることができずに、目覚めと共に、再び記憶の底に沈んでしまう。

金粉をまぶされた如く眠い朝 寝起きが非常に悪い方である。朝は確かな重力の存在を感じる。