文旦

文旦をさくりと剥けば許し時


  文旦はおいしい。酸っぱくなく、ほろ苦く、グレープフルーツのような味わいでありながら、夏みかんのように剥いてたべるところがそこはかとなく懐かしい。文旦は皮と身の間の白い綿のような組織が厚いので、おしりに十字の切れ目を入れておけば指でも容易に剥けるのである。文旦をたべていると、心にある尖ったものが、なんとなく「ま、いっか」という心境になってくるのが不思議である。