有夫恋

alzira2006-07-28

有夫恋の香立たしめてひとごみに


  久しぶりに時実新子の「有夫恋」を手に取った。本の整理をしていたら棚の奥の方から出てきたのである。何とも不敬な話である。この句集が上梓され、一世を風靡した頃、あまりの凄さに仰け反って、自分の作品が実に薄っぺらく感じて、劣等感に打ちひしがれたものであった。今改めて見てみると、やっぱり仰け反って劣等感に打ちひしがれる。本当に100%現実に向き合っていないと書けない句の数々。圧倒される。
  先日の句会で「香水」がお題だったので、なんとなくここ数日香りに関心がいき、フレグランスのネットショップを覗いたりしている。世の中にはゴマンと香水があり、それぞれイメージに合った名前と、香り立ちがあるらしい。それを見ていてふと思ったのだが、もし「有夫恋」という名の香りがあったら、どんな香りだろうか。この句集のイメージからすれば、トップノートはインパクトの強いスパイシーな香り、ミドルノートは甘い花と果物の香り、ラストは透明で切ないウッディノートという感じだろうか。これに符合するフレグランスがあるだろうか、探してみよう。
  この句集を軽薄に香りに例えたり、このような句にしてしまうのは不敬と誹られるかもしれぬが。