百物語

九十九杯飲み干して百物語かな


  図書館で「絶滅寸前季語辞典(夏井いつき著、東京堂出版)」という本を借りてきた。これがなかなか面白く、読み出したら止まらなくて、日曜半日を棒に振ってしまった。
  季語に拘った作句は私の流儀ではないので、まとまって季語を勉強したことはこれまでなかった。何故ならば、季語の季節区分と、リアルタイムな季節感(特に北海道においては)が往々にして一致しないことと、俳句人にしか通じない言葉を使うということがあまり好きではなかったからである。
  しかしながら、本書における季語の扱われ方は上記のような私の抵抗感を払拭するものであった。ここでは季語は俳句を制約するものではなく、むしろそれをネタにして遊ぶもの、という感じである。本書で扱っている季語は表題の通り、現代社会ではもはや「死語」となりつつある言葉であり、中には例句を探すことが困難を極めるようなレアかつキテレツな言葉も登場する。それをあえて採り上げ、例句がなければ一句ひねりましょう、という遊び心溢れる企画なのだ。この遊び心こそ「俳諧味」である、ということが実に洒脱な文章で書かれており、このような趣向であれば私も大いに是とするところである。
  今日は晩夏の季語として紹介されていた「百物語」で一句したためてみた。ちなみに本書には続編も出ており、両方とも購入を決意したところである。