どろろ

吹きすさぶ百頭鬼の虎落笛


  手塚ファンとしては観ておかねば、ということで「どろろ」を観てきた。不完全に生まれついたものが、自らのアイデンティティーを求めてもがいていく、という多くの手塚作品に共通するテーマである。原作ではかなり男臭いキャラクターの主人公百鬼丸役に妻夫木聡と聞いたときは少し線が細すぎやしないかと思ったが、どうしてなかなかの存在感である。もう少し年を取ったところで、是非「ブラックジャック」もやって欲しいものだ。どろろ役の柴咲コウもいい。原作の設定ではもっと幼い少年(実は少女)なのだが、そのイメージを壊さない終始「悪ガキ」然とした振る舞いの反面、寝顔にのみほんのり色気を漂わせる、心憎い演出であった。
  よけいなことだが、観ていてちょっと琵琶を習ってみたくなった。