時実新子追悼

桜宵をんなの灰がながれゆき


  時実新子が亡くなった。3月10日の事だそうだが、多忙を極めて新聞もテレビもろくに見なかった頃で、つい最近まで知らずにいた。
  時実新子が「有夫恋」を上梓したころ、私は短歌をつくっていた。初めてこの句集を読み、本を閉じたあとはしばらく触れないようにしていた。あまりの衝撃に、五、七、五のリズムに引きずられそうで怖かったからだ。その後幾人かの俳人柳人に衝撃を受け続け、ついに逆らいきれず現在は俳句中心であるが、その最初の一撃は時実新子だった。
  図らずも久しぶりに読みたくなり、エッセイなどひもといていたところであった。3月10日、桜は間に合っただろうか。


愛咬やはるかはるかにさくら散る  新子