吟遊詩人

言霊を鬻ぐ民あり砂嵐


  アフリカのマリ共和国に、代々吟遊詩人を生業にする一族がある。農耕も狩猟も商いもせず、家族単位で街から街へ旅をしながら、祝い事に呼ばれたり、その街の名士を訪ねては褒め詩を披露したりし、返礼として受ける祝儀で生計を建てる。彼らの発する言葉の力は絶大で、褒め称えればその対象となった人の栄光はいや増し、逆にたった一言でその名声を地に堕とすことも可能だという。以前テレビで彼らの特集が放映され、詩が謡われるのを聴いた。意味はわからなかったが、とてもパワーを感じた。これがラップのルーツに違いないと思った。
  *鬻ぐ(ひさぐ=販ぐ)の意。