あばれ川脳よりつるりと逃げしもの


   俳句や短歌をつくる人なら誰でも経験があると思う。無心に運転したりしているときにふっと句が浮かんで、おおなんたる名句、わたしって天才とか思ったりするのだが、そのあとひょいと注意がそれて、他の考えが頭に入り込んだ隙に、件の名句はどこへやら、すっかり忘却の彼方である。できたときにはこんなよい句を忘れるはずがないと思い、停車してまでメモることはしないのだが、後悔先に立たずである。いかに脳を振り絞ろうとも思い出すことはできず、逃がした魚は大きく思えるのだ。