木イチゴ

飽くるまでボイズンベリー吸ひし夏


  昔、近所の雑木林に木イチゴが生えていて、悪ガキ時代はよく食べに行った。野生の果実の中では格段のおいしさで、仄かな渋みと、少し青臭い香りと、すっきりした甘みがこの上なく魅惑的だった。
  最近いろいろなベリーが流行なのか、TVで木イチゴのたぐいをよく紹介している。ニュージーランドのボイズンベリーは、卒業旅行で行ったときペンションのマスターが穫ってきてくれたので憶えている。真っ黒で大きくて汁っぽかったが、形と味はまごうことなき木イチゴであった。「ポイズン」を連想させる発音と、赤黒い汁を飛び散らせずに食できないことと相まって、何やら独特の味だった。