君の魚泳ぐ文月十日かな


  室生犀星の詩に「信濃」というのがあり、好きである。「雪というものは物語めいて降り・・・」という詩である。最近、犀星が魚眠洞の号で俳句も作っていたことを知り、句集を手に入れてみた。わりとスタンダードな有季定型のなかに、ときどきぽろっと詩を思わせる不定型があって面白い。


あんずしづかなるひるすぎに落つ
あんずのたねが乾いた暑さかな   室生犀星日記