オリーブ

オリーブの古木が裂けて我を産む


  吟遊投句七句目。今回の吟遊句はこれで最後。映画「パンズ・ラビリンス」に登場する大きな古木のイメージ。大きな木には、なにかプリミティブな力を感じる。
  昔、大学の卒業旅行でニュージーランドに行ったとき、ニュージーランドの都市間バスを利用したことがある。彼の地のバスは途中家々に新聞を配り回ったり、ドライブインに入って珈琲タイムを取ったりするのだが、そのような寄り道地点の一つに、カウリー・ツリーの森があった。特に観光バスでも何でもない、普通のバスなのだが、そんな寄り道をするところがいかにものどかなニュージーランドらしい。
  バスから降りた私たちは、森の奥へ向かって散策路を歩いた。すると、不意に開けた空間が現れ、その奥にカウリーのものすごい巨木が立っていたのだ。カウリーの樹肌は鈍い銀色で、うねうねと螺旋模様が刻まれている。古木ほどこの模様が美しく、下の方には枝がないので、天に向かってうわっと広がっているような樹冠を持つ。そしてその樹高はすばらしく高い。そのあまりの神々しさに、その樹が見えたときは、謁見の間へ導かれる私たちを、散策路沿いの木々が衛兵のようにうやうやしく道をあけて通したかのようであった。一つの巨木の思い出であるが、いつか再びニュージーランドを訪れ、あの木に再会することを夢見ている。
  ちなみに、その時の写真は埋もれているので、カウリの写真が載っている頁を参照させていただいた(http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Oasis/3529/nz_life/travel/kauri.html)。