貝鮹皇女

貝鮹といふ皇女ゐて春の風


  吟遊投句。原句では「貝鮹といふ皇女ゐて春隣」として、「春隣では老人の懐古趣味俳句」と夏石先生に酷評を受けたもの。ご指摘の通り、今回のは至って安直に使った「春隣」であった。
  少なくとも、以前春隣を使った「くすり指疼きはじめて春隣」http://d.hatena.ne.jp/alzira/20070217の時は、「春隣って使うだけでいかにも俳句らしくなって安易な感じだからなるべく使いたくないけれど、ここはどうしてもこの言葉でなくてはならない」のであえて使ったのだが、今回は自らなるべく使いたくない使い方をしてしまった。一昨日の世界俳句協会の集まりで鮟鱇先生に「どうしてこの言葉でなくてはならないのかよく解らないで言葉を使っていないか」という耳の痛い指摘を受けたが、誠にその通りである。反省。
  なお、出典は山岸涼子のコミック「日出処の天子」より。読んでいて、聖徳太子のお后になった莵道貝鮹(うじのかいだこ)皇女の名前を見て、ウジに貝にタコとは、女の子の名前としてあんまりじゃあないか、と率直に思ってしまったのであった。その「ぷぷっ」という感じを、春めいたお天気にかさねてみたというわけである。ただし、莵はうさぎの意のようで、ウジ虫とは関係ない。