オバQ

alzira2008-06-19

押し入れの冒険オバケのQ太郎


  林望の新書「リンボウ先生偏屈読書録」(丸善ライブラリ−)を読んでいる。著者が独断と偏見で選んだ本の書評を集めたものであるが、なかなか面白い。その中に、「しずかチャンの愚かさ 天野祐吉著『テレビは嘘が嫌い』」という章がある。この本自体は読んだことがないのだが、比喩として長寿コミック「どらえもん」のキャラクターついて述べている部分がある。林氏によれば、ステレオタイプな登場人物の中でしずかちゃんは無性格な女の子として描かれ、女性は意志や主体性が無く、おとなしくてかわいいのがよいとする思想の現れとして批判している。
  この部分を読んで、私が好きな「オバケのQ太郎」との違いを考えてしまった。子供の漫画に何を考え込むやらと思われるかもしれないが、「オバQ」は大人になって読んでも面白い。一方、「どらえもん」の方は大人になったらめっきりつまらなくなってしまった、この違いは何だろう。
  思うに、「オバQ」の方は、主人公に特段の特技も能力も無く、化ける能力もなくオバケとしても劣等生という設定と、それが故パターンに陥らないストーリー勝負の面白さに依るところがあるだろう。キャラクターもずっと多様で、女の子キャラもしずかちゃんに相当するよっちゃんの他に、サバケてボーイッシュなユカリちゃんや、優等生でインテリのP子、柔道黒帯で女の子らしいところが一つもないのにQ太郎に熱愛されるU子と実に多彩だ。
  このように「オバQ」が大好きで出来ることならすぐにでも大人買いして揃えたいのだが、絶版になって久しいのに、諸般の事情により再販されていない。それゆえ古書はコミックにあるまじきべらぼうな価格が付いており、やや手の出る値段の時に少しずつ買うしかないのが悲しいところである。