alzira2011-07-06

草の虫もらいしここはどこだらう


where am i
i got a grashopper
made from grass


  乗り換えの駅で。小さなその駅は無人駅で、駅前に古い建物があり、そこは洋食屋だったので、昼食をすることにした。扉をあけると結構広い店内はほぼ満席、カウンターの奥の厨房で若いシェフが2人と、ホールで3名ほどの女性のウエイターがきびきびと仕事をしている。外のしんとした静けさからは想像もつかなかった喧騒、ちょっと大げさに言えばまるで異界の扉のよう。店員がきびきびしている店はいい店と相場が決まっている。お客は次々来ていたし、ハヤシライスはとても美味しかった。

  ランチの後、駅で待ち時間があった。おじいさんがひとり、待合の椅子に座っていた。私も座ったら、「あげる」と、ひょいという感じで私にくれたものがある。草で編んだバッタである。驚くほどよくできていて、よく見ないと本物と思ってしまいそう。これを生け花に使ったら素敵だろう。お礼を言ったら、草でなんでもできるんだよ、と独り言のように言いながら、また虫を編み始めた。
  そのうち、男の子を連れたお母さんが来た。電車に乗るのではなく、マンガのキャラクターがボディに描かれた電車を見に来たらしい。「まだかなぁ」「次かなあ」「はやくこい」などといいながら何台かやり過ごして、ついに通過したその電車に歓声をあげたその子も草の虫をもらった。
  やがて、おじいさんとその母子はどこかへ帰っていった。小さな駅前の、昼下がりの不思議な一刻であった。