風媒

風媒樹触れ合はぬまま契りけり


anemophilous trees
are making love
without any touches


  銀杏の樹には雌の樹と雄の樹がある。近所の芝地にも、ギンナンをたわわに成らせて盛大な臭いを振りまいている雌の樹と、十数メートルほど離れて雄の樹が立っている。さしづめカップルの樹である。だが、樹なのだからこれ以上近づくことも触れ合うこともない。風に乗せた花粉をやり取りするのみである。この二本は視界の範囲内にいるが、時には、数キロも数十キロも離れた「相方」がいることもあるだろうな。
  そんなことを思ったものの、何となく句にならないまま頭の隅っこに置きっぱなしにしていたが、ミルトスさんの日記にある「風媒」という言葉に、すとんと句に落ちた。
  今日は少しばかり季節外れなのはそんな理由である。