驟雨
驟雨来て血の匂い濃くなりにけり
a sudden shower has come
the scent of blood
were getting strong
一昨日、この周辺に集中豪雨があった。からからの乾燥から一転して豪雨。
山崎佳代子さんの詩が好きだ。山崎さんは、旧ユーゴスラビアで、NATOの空爆に遭いながら帰国を拒み詩作を続けたという、特異な経歴を持つ詩人である。だが、以前、最初に「鳥のために」を札幌の紀伊國屋書店で何となく手にとった時は本当にただ何となく、で、山崎さんについて一切何も知らなかった。何故買ってみる気になったのだろう、と時々思った。よく覚えていないのだ。
今、山崎さんのエッセイ集「そこから青い闇がささやき」を読んでいる。読んでみて、一目でその詩に心惹かれた理由が少しわかった気がした。戦下のベオグラードは、筆舌に尽くしがたい惨状と想像する。経済制裁で生活も苦しく不便だ。だが、その筆致は淡々としていて、声高に訴えるわけでなく、時に小さな希望を掬い取るように描きこの上なく美しい。静かにしとしとと土に染みて恵みとなる雨のようである。
「アトス、静かな旅人」から一つ紹介する。
いのりのあさ −オストログ修道院
ここでは鳥たちが
空を啄む
たかくひくく
ひくくたかく
さまざまま声を
あわせ
日々の糧を
よろこび
いのりのことばを
さえずりながら
やすみなく
啄み
数え切れないほどたくさん
空にあなをあける
夜がきて
青い闇の小さなあなから
天の光が
地にふりそそぐため
鳥たちは啄む
深い谷間の天国を