食べる

夜更けし桃食む我を見るなかれ

the night has advanced
never look at me
eating a peach greedily


桃の汁まみれの指のやりどころ

what should i do
my fingers
smeared with peach juice


  河野裕子の「燦」は、繰り返し読んでその度に新たな発見をする。


  君の持つ得体の知れぬかなしきものパンを食ぶる時君は稚し   
                         「森のやうに獣のやうに」河野裕子

 
  この歌に、先々週まで放映された土曜ドラマの「夫婦善哉」を思い出した。このドラマはなかなか良かった。カメラワークが凝っていて画面が美しいし、時代背景が昭和初期なところに草刈正雄が隠居風の役柄で出演し、「美の壺」とクロスオーバーな感じで遊び心がある。最近のNHKなかなかやりますね。
  ドラマ開始直前、主演の森山未來のインタビューをたまたま見た。このドラマには大阪のB級グルメが沢山登場するのが見せ所の一つ。森山氏の役は、A級もB級も遊び慣れた商家のボンなのだが、ドラマの監督から、妻役の尾野真千子と食べる共演シーンで「食べ方で惚れさせろ」というミッションが下ったとの裏話を披露していた。確かに、単に美味そうなだけでなく、ちょっと母性本能をくすぐるような一心不乱な食べ方だった。人がものを一心に美味そうに食べるところは、男女を問わず惚れるツボと思う。
  余談だが、このインタビューで、森山未來は共演の尾野真千子のことを、「肝が据わっていて気配りも出来るし、ええ女やなあと思いました」と語っていた。通常なら、「完璧な役者さんで共演できて勉強になりました」などと当たり障りなく言ところだろうが、「ええ女やなあ」とさらっと出てくるところが新鮮。