ひびわれ

びわれにしづかに這わす指の腹


slowly running
my finger cushion
along the crack


  照井翠の句集をいくつか入手。「雪浄土」を読んでいる最中。「龍宮」前夜の照井翠。震災を経る前の句集を読んでも、「削ぎ落とされた美」は明らかである。この作風が、震災を経てさらに研ぎ澄まされて「龍宮」を生んだと考えられる。



蝸牛経を納めに参ります
虫の音のヲンコロコロと祈りをり
ひと村に刑場三つ虎落笛
狐火や首しらしらと積まれをり
人がひとを獄門に懸け寒卵
子を雪に託して首となりたまふ    照井翠     「雪浄土」