鐘の鳴るそのひとときはゆるやかに


  大晦日の夜、テレビで除夜の鐘を聴いていて(出かけるには寒かったので)、そういえば童話メアリーポピンズに大晦日の話があったなあと思い、本を引っ張り出してきて読み返した。それはこんな話である。少年マイケルが「古い年はいつ終わるの?」と聞くと、メアリーポピンズは「夜中の十二時の鐘が打ち始めるとき」と答える。マイケルが「じゃあ、新しい年はいつ始まるの?」と聞くと、「夜中の十二時の鐘が打ち終わったとき」と答える。マイケルが素朴な疑問として、鐘が打ち始めてから打ち終わるまでの間はどうなるのかと聞くが、メアリーポピンズはそれに答えてくれず、寝かしつけられてしまう。実はその時間にはある秘密が隠されていて・・・という話。
  日本の除夜の鐘は古い年の煩悩を払うという意味で百八回のうち百七回を大晦日のうちに打ち、最後の一つを新年になってから打つのが本来らしい。実際は夜十一時半頃から打ち始めて翌朝一時くらいまで続けて打っているお寺が多いようである。まあ昔はカウントダウンもなく、零時くっきりに新年に切り替えという意識は今より薄かったであろうから、それでいいのだろう。
  行く年来る年を告げる鐘に思いを向けるのは東西共通ということであろうか。