時計
音のする時計を忌みて秋くれば
hating the clock
that ticking
whenever autumn comes
機械式の腕時計を買った。ゼンマイを巻いて動かす古いタイプの、父母の世代の時計である。この方式の時計はもはやアンティークの部類であり、ネットオークションなどではたいそう高価に出ているが、これはレトロ雑貨店のデッドストックで安かった。昔風に言えば「お洒落用」のチープなものなのだろう。一応スイス製ではある。
これが小さくコチコチと音を立てるのだ。コチコチいう腕時計を持つのは初めてで、違和感のような新鮮なような。そういえば私が子供の頃、母が大切にしていたオメガの腕時計も、耳に近づけるとかすかにコチコチいっていたっけ。最近の時計は音を立てないので、忘れていた。このコチコチはストップウォッチのように時を”刻んでいる”感じがして、今何時か確認するだけのものが忘れてしまった役割を持っているような気がする。いろいろ焦るべき年代に突入して、図らずも私の手元に来たということだろう。