迷宮の合わせ鏡を叩き割る


smashing
opposite mirrors
in the labyrinth


  「インセプション」先行上映を見てきた。とてもよかった。私的には五つ星である。
  まず、テーマが「夢」という私にとって興味のあるものだった。夢を介して他人の精神に入り込み情報を得たり刷込んだりというプロットは、「ザ・セル」などこれまでにもあったが、本作は夢の中で更に夢を見るという多重構造であり、しかもその多重の夢を設計し演出するという複雑なプロットになっていて、何か原作本があるのかと思ってしまう重厚さである。もちろん、その夢をヴィジュアル化した映像も素晴らしい。
  次に、俳優陣の豪華さも見ものだ。散々宣伝されているレオナルド・ディカプリオ渡辺謙の共演は言わずもがなだが、脇役もなかなかのキャスティングで、若手のエレン・ペイジやジョセフ・ゴードン=レヴィットも含めてキャリアを積んだ実力派ばかりだ。特に、ジョセフ・ゴードンは光っていて、本作でかなり評価されるだろう。
  そして、映画評にはあまり触れられていないが、音楽が素晴らしい。映画音楽の重鎮ハンス・ジマー(レインマン、ライオンキング、ダビンチ・コード、ブラッカイマー監督のアクションもの他多数)の中でも最高傑作ではと思う。ジマーの音楽はオーケストラを十二分に駆使したドラマティックさが持ち味だが、本作のシリアスな重低音が響く音楽はそれだけで鑑賞に耐え得る芸術である。サントラの購入を決意する(こういう映画音楽をクラシックコンサートで演奏してくれればもっと行く気になるのだが。近世のオペラやバレエの音楽など、作曲当時の位置づけは映画音楽にかなり近いのにと思う)。
オリジナル・サウンドトラック インセプション
  以上、映像・音楽を味わうために、本作は是非とも劇場で観るべきだ。