魔女

胸元のそばかす数多夏の魔女

a lot of frackles
on her breast
−the witch in summer

　　イタリアでは、おおむね接客は日本のように愛想良くはなかった。だが、不親切かというとそうではなくて、対応はそれなりに親切だったりする。慇懃無礼の逆という感じだ。
　　あるホテルの受付の女性は、スリムで背が高くて赤毛のボブで、話し方もぶっきらぼうで高い鼻が少し怖そうだった。その人が、下げた朝食の盆を持ちながら厨房の扉をとんがった靴先でがんっと蹴って開けたのには驚いたが、私の下手な英語に辛抱強く付き合っていろいろ教えてくれたし、チェックアウトの時「バイバイ」と言いながら見せた笑顔は魅力的だった。カニグスバーグの児童文学に登場しそうなキャラクターだ。
　　観光客も多かったのでイタリア人とは限らないとは思うが、向こうでは、日に焼けて顔にも腕にも胸にもしみそばかすを作り、それでいてノースリのタンクトップを着て闊歩しているマダムを沢山見かけた。そんな中に数日居たら、小さいコンプレックスは吹き飛んでしまう。