追跡者

追跡者となりて君のあとを追ふ


being a tracer
i persuit
after you intently


  リチャード・コニフ著の「飢えたピラニアと泳いでみた」というエッセイが面白かった。著者はナショナル・ジオグラフィックなどの雑誌に書いているライターで、動物学者、昆虫学者などに随行して世界各地に足を運び、珍しい動物を見たり探したりした経験を書いたものが本書である。いろんな動物の生態はもちろんだが、それらを研究対象にする科学者の珍態がよほど面白く、著者の興味の対象もそこにあるらしい(著者自身も含めて)。
  中でも気に入ったのは、「ネコを追跡する」という章に登場する、ナミビアのサン族(ブッシュマン)である。彼らは、あらゆる足跡や痕跡から、いつ、どのような生物がそこを通り、何があったかを正確に読み解く能力を持っている。そして、足跡から個体識別までやってのける。著者は二人のサン族の男性と豹の足跡を追い、数日の間にその地の豹を個性で識別したが、その間実物をほとんど見ていないことに気がついて驚いたという。サバイバル術に同様のスキルがあることは知っていたが、美しい獣と美しい人間のやり取りとなると、エレガントでもはや芸術の域である。
飢えたピラニアと泳いでみた へんであぶない生きもの紀行