hanabi

仄暗い頭蓋のなかの遠花火

fireworks far from here
in the depth of the darkness
inside my skull


  引き続き照井翠の句を少し紹介する。


大花火蘇りては果てにけり         
花びらを溜めるところもなかりけり     照井翠「龍宮」


  花火の句、「蘇りては」である凄さ。これが、たとえば「生まれ出でては」ならば、共感しやすい秀句であはるがありがちな感じになってしまうだろう。「命の一瞬のきらめきとはかなさを花火に例えて表現してみた」といったような具合で。だがそれが、蘇りては、であることで、花火を見上げる人の心にこみ上げる死者への思いが痛いほど伝わってくる。この一語は普通は選べない。
  花びらの句は、本当に最小限のことを述べただけで、遙かに広がる荒涼とした風景を表現している。
  両方とも「けり」で終え、素っ気なく事実を述べて止めているのが、重い事実を過剰に表現せず、かえって切々と伝える結果になっている。