2005-01-01から1年間の記事一覧

電脳喫茶

星雲や電脳喫茶にある異界 ネットカフェというものがあるらしい。別に家庭にあるPCと何ら変わらないのであろうが、「ネット専門の場所」という事実が特異な感覚をもたらす。

宿酔

昨夜の酒残れる身にて刃物持つ ボージョレー恐るべし。飲んでいるときはジュースみたい、なのだが。毎年やらないと気がすまない自分に喝(?)。

新酒

あわ立ちて実り寿ぐ新酒かな ボージョレー・ヌーヴォー解禁日。なんだかんだいいながらつい買って飲んでしまうのは酒飲みの悲しい(?)性。先ほど世界遺産のサンテミリオンをNHKで紹介していた。苗を植えてから葡萄が実るようになるのに数十年。ワイン作り…

月夜

音のない氷月夜に冷やす酒 今日は満月。雲もなく、煌々としてとても冷えている。北海道の住宅は窓が二重ガラスで、うまい具合にボトル一本分くらいのその隙間に酒をおいておくときんきんに冷える。もう少しして雪が積もったら、そのままずぼっと瓶を雪に突き…

夜長

夜更けてこんな孤独も肴とす 北海道は緯度が高いため、日長の変化が激しい。夏は午後七時過ぎまで明るいのに、今は午後四時過ぎるともう暗い。ワインを舐め舐めつい本だの映画だので夜更かししてしまう。

どうしても抜くでもなしの小棘かな 仕事柄よく手に棘が刺さる。特にいやなのは古いグラスウールのポールをうっかり素手でさわったとき、目に見えぬほどの細かいガラス繊維が刺さるのである。ひどく痛いわけではないが、見えないから抜くこともできないし、と…

きりぎりす

冬来たる骸となりしきりぎりす 駐車場の砂利の上に、きりぎりすの死骸がころがっていた。雪も少しちらついてきている。例年より遅いとはいえ、確実に冬である。

灯油

つたぷたぷつつたぷたぷと油揺る 今年は灯油が高い。昨年の1.5倍くらいする感じである。北海道は各戸に何十リットルも入るホームタンクが完備されているが、一度に買うと高いので、ポリタンクで少しずつ買う。

雨雲

あまぐもの往来忙しくなりて冬 天気が非常に変わりやすくなった。朝はピーカン、昼頃には真っ黒に曇って雷混じりの土砂降り、3時以降にまた日が射す、という感じ。季節の変わり目は毎年こうであるが、今年は平年より半月ほど遅い気がする。

シュレッダー

シュレッダーに餌をやる如く紙喰はす いろいろと書類を処分する必要が生じて、シュレッダーを買った。それを使うのが妙に快感で、癖になりそうである。職場にある高性能のシュレッダーはさらりさらりとスマートに紙を処理していくのだが、私の買ったのはもっ…

資源ごみの日におもひでの箱壊す 必要がなくなった思い出の箱。こんなものもつい資源ごみに分別しようとしてしまうのがふとおかしかったりする。

三日月

アラビヤの窓より望む三日月夜 今日は、美しい三日月であった。地平近くに、大きく、赤みがかった三日月。満月が日本や中国といった東方のイメージがあるのに比べ、三日月が西方のイメージがあるのはなぜだろう。

風の寺

荒野にて何の祈りや風の寺 林望氏のエッセイ「イギリスはおいしい2」を読んだ。これによると、荒野に用途不明の建造物が突如建っており、それは「風の寺」と呼ばれており、イギリスのある貴族が過去に建てた「つくりものの古代遺跡」であるという。誰が何を…

君の名を思ひ出せずに夢醒める 夢の中で、昔の記憶の断片が意識の表面に浮上することがある。大抵はつかまえることができずに、目覚めと共に、再び記憶の底に沈んでしまう。

金粉をまぶされた如く眠い朝 寝起きが非常に悪い方である。朝は確かな重力の存在を感じる。

翡翠

蛭めいて指に吸い付く翡翠かな 翡翠の指輪を買った。翡翠と言っても、貴金属の台にはめ込んであるような宝石ではなく、石を直接くりぬいたもので、限りなく石に近い、安い物である。サイズ的にぴったりなのはいいのだが、薄緑色のマトリクスがなにやら生物の…

砕けたる心の破片を掃く箒 どんな人の心にも、可塑性のない部分があって、そこが壊れると元に戻らない。とはいえ、さっさと危険な破片は掃除して、次の一歩を踏み出したいものである。

影法師

我に似る我が影法師不憫なり ずっと私と共にある影法師。私がスマートなときはスマートに、不摂生をしてブサイクになればそのままにブサイクになってしまう。おまえにも苦労をかけるねぇ、なんて言ってみたり。

木犀やドラマに詳しくなりし父 父が完全にリタイアして悠々自適の生活になり、しばらく経った頃実家に帰ってみると、現役時代には全く興味を示していなかったTVドラマを欠かさず見ているのに驚いた。見られないときはちゃんとビデオ録画する熱心さである。…

雲ひとつない空別れを切り出さむ 今年の秋は、この地方としては奇跡的な天候の良さである。あまりに空が綺麗だと、かえって少々寒々しい気持ちになる。夕陽も多少雲がちな方が美しい。

葡萄酒

葡萄酒を傾け時空を遮断せり 札幌の某所に狭くて小さいワインバーがある。昔から狭くてごみごみした隠れ家的な空間が好きな私はとてもなごんでしまう。その小ささとは裏腹にやたらとワインに詳しいマスターとの他愛のない会話も心地よい。話したくない時はほ…

頂に風の女神の像が立つ 昨日札幌へ飲みに行った。大通公園に新しい像ができていた。この句は以前TVでルーブルの「サモトラケのニケ」を見て詠んだものであるが、この像もとてもイメージが合っている。

雪虫

雪虫のふわりふわりの一生かな 今日、雪虫が飛んだ。雪虫は羽のあるアブラムシの一種で、小さな綿のような感じの虫である。北海道では、この虫が飛ぶのを見るとじきに初雪が降るとされ、今の時期、ほんの一瞬見られる生き物である。こんなに雪にそっくりな生…

礫降る限界点を探す旅 いろいろな意味で、自己再生しなければならない時である。

野紺菊

わたくしの生きづらさなど野紺菊 最近公私ともにいろいろとあるが、一個人の些細な波乱など関知することなく、スケジュール通り野は野紺菊の季節。北海道の野紺菊は、株によって青からピンクに近い色まで、微妙に色合いが異なる。遺伝的なものなのか、土壌条…

満月 弐

降りしきる月の粒子を浴みゐたり 今夜の満月もくっきりだが、もろもろとしたレースのような雲が時折かかる。さしもの満月も携帯のカメラではこんなもの。ETの自転車が飛ぶシーンのような皓々たる月が撮ってみたい。

満月

見上げれば満月なりしこみ上げる 満月は明日であるが、今夜の月夜は雲一つなく、月もくっきり、きれいである。 数ある満月の名句の中では、次の句が最も好き。 満月や大人になってもついてくる 辻征夫

野男

野男の煙草の煙風に散る 戸外で働く男が、仕事の手を休めて一服し、その煙が風に吹き散らされる。それはウイスキーの広告のスチールのような一場面である。銘柄は、ラフロイグ。

贄の血を受くる如くに杯を持つ ルーマニアのワインで気に入っている赤ワインがある。気品のフランスとも、土俗的なスペインとも、庶民的気安さのイタリアとも全く異なる味がする。グラスに入れても向こうが透けて見えないほど暗く、味はとても重厚かつ複雑で…

錫杖

錫杖の一振り魑魅魍魎霧散せり 俳人中村苑子を知るきっかけとなったアニメ映画「イノセンス」のサウンドトラックを買った。錫杖の音が鮮烈に入り、印象的である。