万年筆

alzira2008-03-29

宇宙までブルーブラックの線延ばす


  今日、札幌の大型文具店に万年筆クリニックが来ているとのことで、行ってみた。もう十五年以上使用しているものと、昨年購入したものを二本持参。どちらもプラチナ。長年使い込んでいる方は、何と学生時代拾ったもの。研究室の、普段ほとんど開かない古い戸棚の引き出しの奥に転がっていたのをちゃっかり頂いたのだが、これが非常に書きやすく、以来愛用している。ところが昨年これを踏んづけて、ボディーに罅を入れてしまい、代替を購入した。が、どうもペン先が硬くてどうかすると掠れるので、フィッティングが必要かなあと思っていたところであった。古い方も接着剤で応急処置して使っており、どちらも持参した。
  クリニックはパイロットのフェアの一環なので、パイロットの技術者の方が二名来ていたが、特にフェアの購入品でなくとも、他社の万年筆でも持ち込みでもok、しかも部品交換でない限りタダという何とも嬉しい企画。そして、この技術者の方が半端でなく、とにかく万年筆と万年筆を愛する人が好きで好きでたまらないという感じの対応である。ちょっと試し書きをしただけで書き癖を読み取るのはもちろん、私では全く感知できない微細なペン先の摩耗を修正し、格段に書きやすくしてくれた上、万年筆のよい書き方や選び方についてひとくさり講釈まで受けた。これがタダとは安すぎる。私の隣では延々、何とか言うパーツを研げるのは世界でも日本の誰々先生だけだとか、欧米のブランドを日本語書き仕様にフィッティングするにはどこをどう磨けば良いとか、マニアックを通り越して別世界の話で盛り上がっている。一ミリに満たない万年筆のペン先一つにも、深遠な世界があるものだ。