こんこんと眠れる繭の傍らで母はしづかに蛾を食みゐたり


  今日は短歌で。
  蜘蛛の巣がかかっている窓のそばをいつも通る。窓ごとにひと家族が住んでいて、つい見てしまう。どの家族も母蜘蛛と繭の組み合わせだ。子蜘蛛は繭からが出てきた後も、しばらく巣にとどまって、ある日いなくなる。それで、この家は子蜘蛛がまだいるな、とか、ああもう巣立ったんだな、とか。ひとつの家の母蜘蛛が、今日は蛾にありついたらしい。食べる方も食べられる方もぴくりとも動かない、捕食者と被捕食者の関係とするには静か過ぎる光景である。