南極

笑った息も怒った息も凍って空へ


the breth with laughing
or yelling
froze and rose up to the sky


面白南極料理人 (新潮文庫)
  西村淳著「面白南極料理人」を読んだ。映画化されたものを見て、原作も読みたくなったのだ。文字通り抱腹絶倒で、息ができなくなるほど笑い転げた。映画で堺雅人さん演じる西村隊員は穏やかでどちらかといえば口数の少ない癒し系だが、原作者は違うようだ。口は悪くて大雑把、だが極限の閉鎖環境で爆発しそうな隊員の雰囲気を察するや「宴会だ!」と場を和ませるエンターテイナーでもある。
  著者が北海道出身であり、また二度目の南極体験であるせいか、-80℃というあまりにも過酷な低温については意外と冷静な表現だ。オーロラが綺麗だとかいうようなこともあまり書かれない。その分、隊員の越冬生活が、湯気たつような熱気をもって書かれている。何かと理由を見つけてはイベントをし、始終宴会でご馳走を楽しんでいるように思えるが、9人の男性がプライベートスペースもろくにない狭い空間で、1年以上も過酷な越冬生活を送るには必要なことに違いない。ある隊員の日誌にあるよう「楽しむ努力が必要」なのだ。
  次に、佐々木譲によるあとがきより、強力に同感の二文を引用する。

「本書は確実に、今夜はおれも何か作るかな、という気持ちにさせてくれるのだ。料理ができる男って格好いいよなと思わせてくれるのだ。」
「絶対に本書を電車の中で読んではいけない。」