2007-01-01から1年間の記事一覧

オーボエ

オーボエにも肌逆撫でられてゐる夜寒 自分の自信とかが地に落ちているときは、何をしても心が癒されない。

絶対零度の泡酒一献冬の星 今夜は星が凄かった。低気圧が去って、大気の塵を吹き飛ばして行ったのか、星が大きく見え、しかもまだ風が強いので瞬きもビカビカと燃えるよう。冬の星は青いので、冷たい炎が燃えているようである。流れ星も、結構大きいのがいく…

射干玉の黒髪を梳く黒きまま 髪を切りに行ってきた。以前、明るく軽めのシャギーが流行だった頃、美容院に行くたびに髪を染めないか染めないかと勧められた。髪が太くて量が多く、重たい印象に思われたのだろう。茶色にすると明るい印象になりますよ、とのこ…

書架

移動書架開けば異界への扉 移動書架はどうも苦手だが、狭い空間にできるだけたくさんの書物を収納するには不可欠なものである。開ききるまで待つのがじれったいのだ。かといって途中で止めると不具合がおきる。

芋喰へば芋の肝魂の味 ジャガイモの品種キタアカリは甘くて美味しい。直売で箱単位で買って毎日食べている。特にマッシュが美味しい。マッシュで5,6個つくると結構な量になり、2回ほど付け合わせでそのまま食し、それでも残ったらスープに溶かして食べる…

蛾の眉を己の顔に貼つてゐる たまに頭痛がひどくなる。眉間に皺を寄せすぎて眉の当たりの筋肉が痛くなり、更に頭が重くなる。デスクワークが多くなるこの季節ながらの不調。

円錐

晩秋にくづれる円錐またひとつ 紅葉ももう最後の名残が残っているだけ。北海道の11月は冬であり、しかも体が慣れていないため体感温度は一年で最も低い。

図書室

書庫深く蚯蚓の図譜は潜みをり カタコンベの静けさ湛え昏き書架 産毛立つ裁断機には近寄らぬ 秋草は西日に揺れて花図鑑 背表紙の明朝体や金枝編 ぱたんと閉じる記憶の蝶がひらひらと 吟遊第36号投句作。今回はテーマ「図書室」で統一してみた。一句目は以前…

頭蓋骨と肋骨籠の中の蟻 胸の中に蟻がいるような、頭の中に蟻がいるような、落ち着かない一日だった。

群肝

群肝に鱗生やせり十三夜 魚の鱗を取りながら思い出したのだが、昔、子供の頃通っていた耳鼻科の待合室に、蛇女の漫画が置いてあった。女の子の体が、はじめはほんの一部から鱗に変化して、徐々に広がり、ついには全身鱗の蛇になってしまう話で、怖くてしょう…

牧神

牧神の迷宮にも月射す今宵 映画「パンズ ラビリンス」を観てきた。訳せば「牧神の迷宮」である。古代の遺跡らしい、牧神の彫刻が中央に据えられた迷宮が登場する。 予想よりずっとハードな映画だった。メルヘンチックな雰囲気のポスターや予告CMの映像から、…

満月や銀の魚の鱗梳く 旬の秋鮭をクリーム煮にした。煮付けるときは鱗をすかないと口当たりが悪くなる。ここだけは丁寧に。

我の顔の曲がる辻道かはたあれ とっぷりと暮れるのが早くなり、夕暮れ時も陽が低くなったせいで妖しい眩しさ。

ナナカマド

街角のティファニーランプ七竈 街路樹のナナカマドが色づいて、夜になると街灯に影絵のように透けて見えて綺麗。

雪虫

雪虫は舞ふドレミレドレミファソラ 今日初めて雪虫を見た。ああもう秋も終わりだなあ、と思う。

くだり道碧き眼をして立ちつくす 短日性の憂鬱に見舞われる今日この頃。日が短くなると人は鬱になりやすいそうな。人間も自然の影響を受けるイキモノだということである。

野菊

野菊咲いて咲いて咲いてひとりかな 野菊の季節も終盤。火曜日には初霜も降りた。

埋める

埋めても埋めても蒼き思慕の泡 急激に寒くなり、今日も曇って暗い一日だった。北海道の秋はあわただしく、駆け足のように行ってしまう。

ガラス

月光やガラスの館砕け散り キュー植物園の温室のような、巨大な古いガラスの建物の中を何かに追いかけられて逃げる夢を見た。こういう「屋敷の中を逃げ回る」夢は時々見る。

水母

未確認水母警報稲光 相変わらず変わりやすい天気、毎日必ず晴れ間と雨である。

雷光

雷光や抽象に嫉妬する具象 この時期天気がめまぐるしく変わるのは毎年のことだが、今日も雷雲のような厚い雲が立ちこめた。そして時々音もなく強いストロボのような雷光が走った。光だけの雷というのは初めて見た。 今日は注文した現代俳人文庫の夏石番矢句…

ゲバラ忌

ゲバラ忌や生のままのレモンハート注ぐ 今日はチェ・ゲバラの没後40年目。 享年は39歳だったという。レモンハートはラム酒の銘柄。40度のと75度のがあるが、どちらを連想するかは読み手の好み次第である。

大気濃し陸の夢みる魚のため 魚の形が好きである。特に、マグロの、極限まで無駄のない流線型は美しい。また、シーラカンスなど古代魚の、魚として生きることを全うしきれない不完全さも面白い。

玉葱

生きるとは玉葱の皮を剥くごとく 剥いても剥いても芯の見えない玉葱を、剥き続ける毎日であるような気がするのは、秋だからだろうか。いや実際に毎日追われるように剥いているのだ。収穫の秋、20キロほどの玉葱を直売所で買ったから。

蟷螂

蟷螂を肩に乗せたる少女の眸 先々週、東北に行ったときのこと。函館から4回目の乗り換え列車はロングシートの普通電車で、日もとっぷり暮れた夕刻、通勤通学の乗客で一杯だった。その中に、セーラー服の白襟も清々しい中学生の女生徒が4,5人。何気なく見…

中秋や待ちわびし書の届きたる 早川志織の歌集「種の起源」を入手した。嬉しさのあまりちびちび読んでいる。1993年出版だが既に品切れで、ほぼ十年探し続けてどうしても見つからなかったのが、ひょっこりネットオークションに出たのだ。手に入るときはこうし…

水母

氷りつく水母おぼろに霧の森 夢ネタものをもう一つ。 空を飛んでいた。地上は渦巻く雲と霧の下だったが、徐々に下降するとそこは針葉樹の森だった。濃い霧の渦の間から藍色の針葉樹が見えた。地上に降り立ち、少し歩くと切り立った岩の崖がそびえていた。上…

核爆発の夜

俳句大会の時に買った本が重たいので、宿からごっそり送り、しばらく不在の予定だったので遅れて着くよう指定したのがやっと届いてきた。その中から、夏石番矢先生の「無限の螺旋」を読んだ。夢を詩にしたシリーズがあり、とても面白かった。私も夢見は激し…

ラトビアの詩人

ラトビアの詩人の燻らせる俳句 俳句大会に参加されたラトビアの詩人レオンス・ブリエディスさんは、煙草をよく吸われる方だった。近寄りがたい雰囲気で、お話ししたことはなかった。

数学者

竹下にも桜下にも数学者の宇宙 俳句大会の、不忍池散策の時、中国からの参加者で、本職が数学者の蔡天新さんが、竹の茂みの前で周りの人と何か話しているのが見えた。 小川洋子さんの「博士の愛した数式」を読んで以来、数学美という深遠なるものに多少の興…